Takahashi Ukiyo-e Collection

漆黒の闇と巨大な満月を背景に、異国的な衣装に身を包んだ市川三升(九世市川団十郎)の上半身を描く。シンプルでありながらその豪快な構図は、海賊の大親分という役柄に似つかわしい。悪人であることを示す伸びきった百日蔓の髪の毛を、非常に細かい線で表現し得た彫師の手腕も見逃してはならない。本図は、五世尾上菊五郎を雪、初世市川左団次を花というように、当時の人気歌舞伎役者を雪月花に当てはめたシリーズ。芳年には役者絵の作品が多くはないが、三枚続という横長の大きな画面を用いることで舞台の緊迫感を見事に伝えた晩年の代表作となっている。明治23年の作。(日野原健司)