インキュナブラコレクション

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015

カペラ 『メルクリウスとフィロロギアの結婚』

De nuptiis philologiae et Mercurii de grammatica Ed: Franciscus Vitalis Bodianus

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マルティアヌス・カペラは、5世紀頃に活躍したアフリカ出身のローマの著述家であり、おそらく弁護士をしていたとされる。本作品の成立年代は定かではないが、5世紀の最終四半世紀に書かれたという説もある。
全9編からなる本作品は、中世における自由七科の地位を確立し、後の学問に大きな影響を与えた書物として知られる。アレゴリーを用いて学問を論じたいわば百科全書と言える。最初の2編は、擬人化されたフィロロギアとメルクリウスの婚約と結婚を描き、残りの7編は自由七科がフィロロギアの召使として現れ、それぞれが自らを説明する。注目すべき点は、カペラは自由七科を文法、論理、修辞、幾何、算術、天文、音楽に限り、建築学と医学は無言のまま登場させるに留め、自由七科の要素を定めたことである。これは、ボエティウスとカッシオドルスとともに先駆的試みであった。作品の内部構造は、大宇宙と小宇宙を平行させたコスミックオーダーの価値観を意識している。また本作品ではキリスト教的色合いは全く表れないが、キリスト教徒でも容易に受け入れられる多神教の古典的学問の視点を描き出している。
各編は、様々な著述家達の要約、または編集物となっており、中世学問の総体をなし後の作品のモデルとなった。9世紀までは本作品への言及は盛んではなかったが、9世紀半ば以後カロリング朝の文化の手本として広く知られるようになった。今日現存する完全なテクストの写本は、半数以上が9世紀か10世紀のものである。11世紀頃からは、イタリアのヒューマニスト達によって部分的に使用されることが多くなった。
本作品の注釈書は、9世紀にオセールのレミギウス等によって盛んに書かれ、レミギウスの注釈は標準とされ12世紀に積極的に用いられた。また、1600年までに8つの版が印刷されたが、初版は1499年のもので慶應本はこれに属する。
本書を刊行したヘンリクス・デ・サンクト・ウルシーオは、主に15世紀末にヴィチェンツァで活躍した印刷工であり、彼の手による最初の作品は1480年に刊行されたユウェナリスの『風刺詩』であった。本書の末にも彼の紋章である円から十字架が立ち上がっているマークが見られる。
本書は、37行構成の124葉からなり、各編の頭文字は赤字で装飾がなされている。また、再製本ではるが、草花や星をあしらった空押し製本の好例であり、木製の表紙の内側には、見返しに貼られていたであろう写本の形跡として印字が写っているのが見られる。さらに写本が剥がされていることから、二重紐による製本の仕組みも分かる。

【参考文献】
Dictionary of the Middle Ages, ed. by Joseph R. Strayer and others, 13 vols (New York: Scribner, 1982- )
'Martianus Capella', The Catholic Encyclopedia
The Oxford Classical Dictionary, ed. by Simon Hornblower and Antony Spawforth, 3rd edn erv. (Oxford: Oxford University Press, 2003)

(MiT)

詳細情報

Author
Capella, Martianus
Place of Publication
Vicenza
Printer
Henricus de Sancto Ursio, Zensus
Format

fº

Date of Publication
1499/12/16
Binding

Contemporary blind-tooled calf over wooden boards, neatly rebacked, clasps missing.

Bibliographical Notes

124 leaves; initials are rubricated throughout; printer's device on u6v.

ISTC
ic00117000
Reference: 
Goff C117, H 4370*, BMC VII 1048, XII 74, IJL 099, IJL2 119, PP105
Shelfmark
141X@41@1
Acquisition Year
1985