デジタルで読む福澤諭吉

洋兵明鑑. 一

Yohei meikan

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熊本藩の依頼によって小幡篤次郎、甚三郎の兄弟と分担して共訳した西洋の戦術書である。ギリシャ以来の著名な戦闘における用兵術に関するもので、当時としては最も新しいナポレオンの戦術を多く採り上げている。わが国に於けるナポレオンの戦術紹介書の嚆矢であろうといわれている。
木版半紙判五冊本。二二・三× 一五・五㎝。普通の半紙判よりやや少し小型に仕立てたものもある。表紙は網目模様または鞘形卍つなぎ模様の地紋の濃藍色。左肩に子持罫の枠の中に「洋兵明鑑一(二、三、四、五)」と記した題箋が貼ってある。見返しは黄色の和紙を用い、子持罫の外枠の中に簡単な飾り罫を描き、中を縦三つ割とし右側に「福沢諭吉/小幡篤次郎/ 小幡甚三郎/合訳」と訳者三名を竝記し、その下に「慶応義塾蔵版之印」と陽刻した長方形朱印を押捺し、中央に「洋兵明鑑」と書名を大書し、左側に「明治二年/ 己巳初春尚古堂発兌」と記してある。
巻之一は、序文三丁、凡例一丁、目録三丁、本文四十丁、序文の末尾に「明治元年晩冬、慶応義塾同社誌」と記してある。元年の晩冬に脱稿し、二年の初春に上梓したものであろう。目録の項目は本文の項目と字句に相違がある。
巻之二は五十二丁、巻之三は五十丁、巻之四は四十二丁、巻之五は四十四丁、奥附はない。
発売当初の外包み紙を見ると、巻之一、二を一包みにしている。三、四、五の外包みは未見であるが、思うに一、二巻を先づ発売し、三、四、五巻は刻成るに従って後から発売したものであろう。外包みは土佐半紙に見返しの版木でそのまま印刷したものであるが、右肩に丸い朱印が押捺してある。その印は丸の中に砲身を交叉して描き「止戈為武」の四字が彫刻されている。福沢の著訳書の外包みにこのような意匠を施したのは、他に類例を見ない。外包みの裏側に当る部分には「製本売捌所/慶応義塾蔵版/ 岡田屋嘉七」と刻んだ長方形印が押捺してある。
「福沢全集緒言」には、この書の製本何百部を熊本藩に納め、その代金六百両ばかりで二階建の塾舎一棟を増築して、急増する入塾生を収容することができたことが記されている。

詳細情報

タイトル

洋兵明鑑. 一

ヨミ
ヨウヘイ メイカン
別タイトル

Outline of the western art of war

出版地
東京
出版者
尚古堂
出版年
1869
識別番号

福澤関係文書(マイクロフィルム版)分類: F7 A09-01
請求記号: 福 9-2 著作