ボン浮世絵コレクションについて
慶應義塾大学で教鞭をとったボン(George S. Bonn, 1913-2003)教授が収集した幕末・明治期の浮世絵860余点のコレクションです。
解説
「ボン浮世絵コレクション」は、慶應義塾大学で教鞭をとったボン(George S. Bonn, 1913-2003)教授が収集した幕末・明治期の浮世絵860余点のコレクションです。昭和26年(1951)、慶應義塾に図書館学校(現在の文学部図書館情報学専攻)が設立されました。図書館学校の設立は戦後米国が日本の学術振興を図る目的で計画し、東京大学、京都大学、早稲田大学、同志社大学とともに、慶應義塾大学もその設立先の候補として視察がなされ、最終的に義塾が選ばれました。各大学を視察したワシントン大学図書館学科長R.S.ギトラーは、英訳した福澤諭吉『福翁自伝』に書かれた「独立自尊」の精神、さらには福澤が日本の近代化に大きな役割を果たしたことに感銘を受け、それが決め手になったと言われています。米国から教員5名が派遣され、そのうちの一人がボン教授でした。ボン教授は昭和29年(1954)から翌30年にかけて、ニューヨーク公共図書館から文学部図書館学科に赴任し、図書館経営論やレファレンスサービス論を講義しました。来日したボン教授は幕末・明治期の錦絵や絵本に興味を持ち、その後の来日時も含めて、これらの資料を精力的に収集しました。昭和61年(1986)、そのコレクションが慶應義塾図書館に寄贈されました。
浮世絵というと、喜多川歌麿の美人画、東洲斎写楽の役者絵、葛飾北斎の冨嶽三十六景といった江戸時代の作品を思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし、浮世絵は江戸時代に生まれて以降、幕末維新期を経て明治30年代まで制作されました。「ボン浮世絵コレクション」は、その幕末から明治期の作品を中心としたコレクションです。浮世絵にはその時々の風俗や流行が描かれましたが、明治期の浮世絵はまさに当時の世相を映し、生き生きとした時代の雰囲気を今日に伝えています。