荒俣宏旧蔵　博物誌コレクション

ゴールドスミスは英国の詩人、小説家、劇作家で歴史家。アイルランドの貧しい牧師の 5 番目の子供として生まれ、ダブリンのトリニティ・カレッジに学ぶ。学費免除ではあったが、屈辱的な差別感を味わい、勉学には身が入らなかったらしい。富裕で鷹揚な叔父の支援で暮らし、ライデンで医学を学び、1755 年からは世界各地を放浪する。翌年帰国、貧困に苦しみつつ、あらゆる職業を遍歴する。雑誌の編集を手がけたことがきっかけとなって、おのれの文筆の才に目覚め、評判となる傑作をものする。随筆『世界市民』（1762）、長詩『旅人行』（1764）、小説『ウェイクフィールドの牧師』（1766）などがそうである。本書は、ゴールドスミスがビュフォ ンの博物誌に刺激されて書き上げたベストセラー。多数の図入り版が刊行されたが、彼は多作家で、上記の「まっとうな」ジャンルのほかにも、撰文詩集、翻訳、伝記、それに科学の普及本など多くの分野に手を染めた。本書の図版は多くの先行作品からの借用である。

（鷲見洋一編集・執筆『繁殖する自然―博物図鑑の世界』慶應義塾図書館、2003年　より）