インキュナブラコレクション

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043

トルテッリ 『正書法』

Orthographia. Ed: Hieronymus Bononius

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本書は15世紀のイタリアで活躍した人文主義者、ジョヴァンニ・トルテッリが1450年頃に著した書物を後に印刷したものである。最初に印刷されたのは1471年頃であるが、慶應本は1480年にヴィチェンツァで刊行された。
トルテッリが本書を上梓した15世紀中葉、ローマではニコラウス5世(1397-1455)がビザンチンなどの学者を呼び寄せ、自分の庇護のもと古典研究の復興に力を注いでいた。またニコラウス5世は、莫大な資金を投じて古典作家の書物を蒐集し、後にこの蔵書が基盤となりヴァチカン図書館が設立された。トルテッリはこの図書館の司書を務め、最初のカタログを作成したとも言われている。
この書物の献辞のなかで、トルテッリは彼自身を古典文法・文献学の伝統の中に位置付け、自分の著作の意義を説いた。実際、彼の著作は古典文法の参考書として重用された。またトルテッリは、当時世界を変容させつつある事物や発明物に関心を寄せていた。ギリシャ語から派生したラテン語について論じるなか、機械時計、砂糖、羅針儀など新たに出現した事物を挙げ、それらの語源はギリシャ語には辿れないことを示した。
印刷業者ヘルマヌス・リヒテンシュタインは、ヴィチェンツァで印刷所を構えていた。おそらくトルテッリの著作出版の依頼を引き受けるため、トレヴィーゾに移ったと言われている(BMC, VI, xlix)。トレヴィーゾの地に滞在したのは一年ほどで、ふたたびヴィチェンツァに戻ると本書の出版を手がけた。その後1482年からはヴェネツィアに渡り、一時期はヨハネス・ハンマン(IKUL 032参照)とも共同で印刷業を営んでいた。ヴェネツィアではトマス・アクイナス、ヴァンサン・ド・ボーヴェなどの作品を出版し、1494年に同地で生涯を終えた。
慶應本の装丁は18世紀中頃のものであるが、本文や余白に16世紀頃の筆跡で下線や‘Vergil’などの書き込みが所々に加えられている。おそらく出典や関連文献などを記したと思われる。同時代にこの著作がどのように読まれたのかを探る上で興味深い資料である。

【参考文献】
Gombrich, E. H., ‘Eastern Inventions and Western Response’, Daedalus (Winter 1998), 193-205

(ST)

詳細情報

Author
Tortellius, Johannes [Giovanni Tortelli]
Place of Publication
Vicenza
Printer
Hermannus Liechtenstein
Format

fº

Date of Publication
1480/10/31
Binding

18th century vellum binding over boards, with marble papers, edges tinted in red.

Bibliographical Notes

318 leaves; spaces for initial capitals; some marginalia notes in a contemporary (16th-century?) hand.

ISTC
it00398000
Reference: 
Goff T398, HC 15567*, BMC VII 1037
Shelfmark
141X@129@1
Acquisition Year
2004
Provenance: 

Ownership inscription (sig. π1r, &5v)