インキュナブラコレクション

031

[新ラテン語韻文およびその作文法の七著作合冊本]

[A bound copy of seven works of Neo-Latin verse and its composition]

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本書は、15世紀末にラテン語で書かれた7編が集められた合冊本である。テクストはドイツの5人印刷業者によって印刷されたものを含むが、そのうち4人はドイツ東部のライプツィヒ大学の関係者で、1人は西ドイツにて中世から著名な町ケルンで活躍した印刷業者、ハインリヒ・ケンテルである。
7編のテクストは、いずれもラテン語の韻文作成について述べているが、2つはローマ時代の古典作家によるもので、5つは中世期末の同時代の「フマニスト」と称される著作家による。この時代には、ローマ時代の再生を目指す ‘studia humanitas’ という分野が盛んとなり、学者は中世期に使われたラテン語を言語学的に研究し、宗教的文脈で用いられたさまざまな表現の語源的な意味の解明に取り組んだ。
本書の7つのテクストを印刷した印刷業者は大学と密接な関わりがあった。いずれのテクストも大学の授業用に印刷されたもので、人文主義的な内容である。また、7編の内5つは注釈付きのテクストである。古典作家たち(ティブルス(031e)やプロペルティウス(031f))とイタリアのフマニストたち(マンキネルス(031a)とマタラティウス(031b))の序文にはそれぞれ異なる大学教師たちの名が記されており、 ‘Ad Lectorem’ と直接な呼び方で、大学生達に聞き手のように話しかける。ポーランドの作者コルウィヌス(031c)の著作も注解であるが、他の2冊は著名なイタリア人ヒエロニムス・バルブス(031d)とドイツのインゴルトシュタットからケルンに来た人文主義者パウルス・レスケリウス(031g)の著作である。
本書に収められた7編すべての行間か欄外に、複数の手による書き込みがある。教師と学生が共に加えた注釈の書き込みは、翻訳、動詞の活用、テクストの増補などである。また所々に未熟な絵も描き込まれている。本書の7つのテクストが主題とする韻文作成は、15世紀末において人文主義的学問の訓練に必須であった。しかし必修科目ではなく、選択科目であったため、午後に行われた授業には、教授陣ではなく学士号を取得した学生が教壇に立ったといわれている。どのような人物がこの合冊本を収集したかはまだ知られていないが、ティブルスとコルウィヌスのテクストの書き込みは同一人物の手によるものと考えられている。ゆえに、この人物が本書を含めこの合冊本全てのテクストを集めた可能性は十分に考えられるのではないだろうか。

I am much indebted to the following people for having improved my articles in Japanese:
Satoko Tokunaga (031, 031g)
Takako Harashima (031a-b)
Noriaki Watanabe (031c, e)
Michiyo Yamaguchi (031d, f)

(StN)

詳細情報

Binding

Volume of seven texts [031a-g] in a contemporary German half pigskin leather binding over wooden boards engraved with blind stamping, using a ms fragment, a fully functional hook-clasp fastening with ornamental engraving.

Shelfmark
120X@860@1
Acquisition Year
1989
Provenance: 

Hartung und Karl, München 8 November 1988, lot 241.