重要文化財

慶應義塾図書館では、国指定の重要文化財5件(約2,300点)を所蔵しています。ここでは、『後鳥羽院御抄并越部禅尼消息』『大かうさまくんきのうち』『解剖存真図』の3件をご紹介します。「相良家文書」「対馬宗家文書」の2件については、それぞれのページをご覧ください。

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解説

『後鳥羽院御抄部禅尼消息』  観応2(1351)年写  1帖

鎌倉末~南北朝時代の歌壇の第一人者である頓阿(1289-1372)が、「御鳥羽院御抄」と「越部禅尼消息」を書き写させて合本にし、巻末に自筆の奥書をつけたものです。「後鳥羽院御抄」とは後鳥羽院が和歌作法や当時の歌人批評を記したもの、「越部禅尼消息」は藤原俊成の養女である越部禅尼が藤原為家にあてた歴代勅撰和歌集の論評で、ともに鎌倉時代の代表的な歌学書です。本書は最古写本として中世文学史上重要な資料とされています。(昭和49年重要文化財指定)
 

『大かうさまくんきのうち』  太田和泉守[牛一]著  [慶長年間]自筆  1帖

「太閣様軍記の中」と題するこの資料は、信長・秀吉に仕えた太田和泉守牛一(1527-1613)がその著作「太閤軍記」から一部を抜粋して書写した原装の著者自筆本です。慶長 15年(1610)年前後の成立と推測され、数多い太閤軍記の中の現存最古本となっています。著者の見聞をもとに秀吉の功業を記してあり、近世の歴史・文学史上とても貴重な資料です。(昭和49年重要文化財指定)

 

『解剖存真図』2巻  南小柿寧一[著]  [文政2年(1819)]自筆 彩色 2軸  重要文化財

淀藩の藩医を勤めた南小柿寧一(1785?-1825)が制作した彩色の人体解剖図集です。寧一はオランダ医学を学び、『重訂解体新書』の附図制作なども担当しました。40体以上の解剖に参加して一屍ごとに一臓器を観察した実見の成果、および西洋解剖学からの知識に基づく実証的な解剖図であり、19世紀 前半に日本人によって描かれた最高のものと言われています。序や跋には当時の著名な蘭学者が賞賛を寄せ、この図を見たシーボルトも賛辞を書き込んでいます。(平成15年重要文化財指定)