デジタルで読む福澤諭吉

時事大勢論

時事大勢論

Jiji taiseiron

民権自由の気風が盛んとなり、政府もこれを統御するに苦しむの余り、ややもすれば抑圧制御の手段を講じ、反動守旧の傾向が見られるようになったので、維新以来の明治政府の改進々歩の方向に在ったことを論じ、政府当路者の態度の変化を誠めたものである。
明治十五年四月五日から十日まで六回に亘り時事新報社説として発表し、同月四六判洋紙活字版の単行本に纒めて上梓した。表紙は薄茶色洋紙を用い「福沢諭吉立案/中上川彦次郎筆記/ 時事大勢論 全/ 明治十五年四月刊行」の文字を縦三ツ割に配し、周囲に飾り罫の枠をつけた意匠である。中上川彦次郎は福沢の甥で、イギリス留学中に井上馨に知られ、帰朝後井上の下に官吏となり工部省外務省などに出仕していたが、明治十四年の政変のとき退官して、時事新報の発刊と同時にその社主となった。福沢が時事新報の社説を後に単行本としたものは、殆んどすべて福沢諭吉立案何某筆記とするのが例であったが、これは便宜上その名を仮りに記したまでのことで、全文ことごとく福沢がみつから執筆したものである。緒言二頁、本文三十九頁、奥附一頁。奥附には「明治十五年四月十九日御届/同年同月出版/定価金二銭五厘/編輯兼出版人飯田平作/東京芝区三田二丁目二番地寄留」と記してある。飯田平作は中津の人で、福沢の親戚に当り、慶応義塾に学んで慶応義塾出版社に入り、時事新報の印刷のことを担当した。
この書には大阪で出た偽版がある。体裁は真版に殆んど変らないが、表紙の文字が、真版は全部書き文字を木版に起しているのに対し、偽版は書名だけ木版で他は活字を使っている。また刊年月が、真版では「四月刊行」とあるのに、偽版では「五月翻刻」となっている。また奥附には「明治十五年五月十七日翻刻御届/ 同年同月刻成/ 定価金十二銭五厘/ 編輯兼元版主飯田平作/東京芝区三田二丁目二番地寄留/ 翻刻人大阪府平民/上山松蔵/東区平野町三丁目廿二番地」と記してある。その他は真版とすべて同じ体裁に仕立ててある。

詳細情報

タイトル
時事大勢論
ヨミ
ジジ タイセイロン
別タイトル
On general trends of the times
出版地
東京
出版者
慶應義塾蔵版
出版年
1882
識別番号
福澤関係文書(マイクロフィルム版)分類: F7 A34請求記号: 福 34-1著作