デジタルで読む福澤諭吉

實業論

明治維新の変革において社会の組織を一変し、日本資本主義の基盤もやや固まって、漸く発展の機運を迎えるようになった折柄、福沢は実業界に根強く残存している封建的気風の打破払拭のために立論したもの。「民情一新」において十九世紀文明の特徴を蒸汽力利用の一点に見出した福沢は、この論説において早くも水力電気の開発に着目し、これを「由々しき出来事」とし、「殖産社会に於て実に至大至重の問題」として実業家の注目を促している。
明治二十六年三月三十口から四月十五日まで十五回に一旦り時事新報社説として発表し、明治二十六年五月に単行本として刊行した。四六判洋紙活版刷、序文三頁、本文百一頁、鶯色の表紙に、中央に「実業論 全」右に「福沢諭吉立案」左に「東京博文館蔵版」と三行に記し、これと全く同じ体裁の扉がある。時事新報社説を単行本に纒めるときは、多くは時事新報社から発売せられるのが普通の例であるが、この書や前掲「尊王論」などは他の出版書肆から発売せられた稀なる例の一つである。どのくらい版を重ねたかは明かでないが、発行、同月十五口再版と奥附に印刷してある版本がある。

詳細情報

タイトル
實業論
ヨミ
ジツギョウ ロン
別タイトル
On business実業論
出版地
東京
出版者
博文館蔵版
出版年
1893
識別番号
福澤関係文書(マイクロフィルム版)分類: F7 A48請求記号: 福 48-1 著作