高橋浮世絵コレクション

隅田川に架かる新大橋にしとしとと降り注ぐ雨。灰色を基調とする落ち着いた画面だが、雨に濡れまいと着物の裾をたくし上げた手前の女性がのぞかせる赤襦袢の色が、全体の色調を引き締めている。光を強く意識した光線画という新しい風景画に取り組んだ清親らしく、水面のきらめきや、そこに反射して映る橋脚や小船の影、あるいは雨雲の広がりなどを、さながら水彩画のような淡い色彩で仕上げている。近代的な視線を含みながらもどことなく懐かしい情緒に溢れているのは、江戸時代を生きた清親の繊細な感性によるものであろう。明治9年の作。(日野原健司)