インキュナブラコレクション

044

『主イエス・キリストの生涯』

Dat Leven ons Heren Jhesu Christi

本書は、フーコ・ヤンゾーン・ファン・ウルデンが刊行した、オランダ語の『主イエス・キリストの生涯』(Dat Leven ons Heren Jhesu Christi)の断片である。本書は、キリストの生涯の主要な出来事をめぐる祈祷文や黙想を、聖務日課の八定時課に当てはめて分類し、それをキリストの生涯を描いた木版画の挿絵で飾ったものである。八定時課による分類は時禱書の基本構造だが、中世の宗教詩にも使われている。ヤンゾーンは15世紀末から16世紀初頭にかけて、何度か挿絵入りの『主イエス・キリストの生涯』を刊行しているが、本書はこれまでに未確認であった新たな版である。大英図書館には、1498年5月25日に刊行された別の版が完全な形で所蔵されているが、その版は、50点の挿絵入りの全部で208葉の八折り本である(BMC, IX, 48)。本書は21点の木版画を含む21葉からなる断片であるが、そのうちの1葉に、‘Gheprent te lLyden. Intiaer heeren. M.CCCCC. opten xij. d in Februario’と刊記があるため、大英図書館所蔵本の2年後の、1500年2月12日にライデンで刊行された版であることがわかる。現在のところ、この1500年版は他の図書館等での所蔵は確認されておらず、新発見の孤本である可能性が高い。木版画には残らず、赤、青、黄、緑、紫の5色を組み合わせて鮮やかな手彩色が施されているが、これも同時代のものである。版画の主題は、刊記がある最終葉の「三日月上の栄光の聖母マリアと幼子キリスト」の図版を除いて、全てキリストの生涯に関わっている。21葉しか残されていないが、「受胎告知」から「最後の審判」まで、キリストの生涯の主要なエピソードが含まれる。「キリストの地獄下り」の図版では、「地獄の口」からアダムとイブを連れ出すキリストの姿とともに、巨大な怪物として描かれた「地獄の口」の上に、ビールのジョッキを片手に‘vobis’(「貴方に」)と乾杯をしている人物像が小さく描かれている。
本書は一葉ずつに切り離されて木版画のコレクターが所有していた。木版画の裏面にあたる本文のみのページには、一部に糊付けされた跡が認められる。

【参考文献】
Bernard Quaritch, Early Books and Manuscripts (Summer 2004), item 47

(TM)

詳細情報

Place of Publication
Leiden
Printer
Hugo Janszoon van Woerden
Format

8º

Date of Publication
1500/02/12
Bibliographical Notes

21 leaves only; each containing a full-page woodcut with bold contemporary colouring; vernacular Dutch text on the versos with penwork decoration; small amounts of text or woodcut replaced in pen facsimile.

Acquisition Year
2004