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アピキウス 『料理帖』

De re coquinaria. Add: Suetonius: De grammaticis et rhetoribus

本書の著者アピキウスは、裕福な貴族階級出身でローマ時代の美食家として知られる。しかし彼自身に関する詳しい歴史資料は見当たらず、その生涯については詳しいことは分かっていない。ある説では紀元前80年から紀元40年頃(アウグストゥス、テイベリィウスの時代)に生きた人物で、フルネームはMarcus Gabius Apiciusであったと言われている。他にも紀元前1世紀頃、スラの治世の人物という説もあるが、前者を本書の著者と捉えるのが一般的な見解のようである。
「アピキウス」という名前は食との関連から、同時代やそれに近い人々の著述にしばしば登場する。例えば、1世紀後半から2世紀前半、ギリシャ・ローマの飲食や風俗について膨大な資料を収集した『賢人たちの宴会』を著したアテナイオスは、アピキウスの名前をとって多くの菓子類がアピキアと呼ばれていることや、アピキウスにまつわるエピソードなどを紹介している。一方、ローマの歴史家タキトゥスは、アピキウスは金持ちの放蕩者であったと酷評している。また哲学者セネカも『書簡集』のなかで、アピキウスは財産をすべて食道楽に費やしたため、借金取りに追い立てられ、空腹のあまり死ぬのを恐れ服毒自殺した、といったエピソードに言及している。稀代の美食家・浪費家アピキウスは、最期まで道楽・美食の道を貫いた人物であったようである。
本書はアピキウスの料理帖と銘打っているが、実際にはアキピウスが唯一の著者ではないと言われている。いつしか優れた料理人を総称してアピキウスと呼ぶようになり、『料理帖』は4世紀になって編纂された。アキピウス自身が考案したレシピ集に、時代を経てさまざまな情報が加筆され、修正が加えられていったのである。アピキウスの本は、古代ローマ人がいかに食材の組み合わせに贅の極みを尽くしたかを如実に示す。古代ローマの豊かな食文化を伝える彼の著作は、写本を通じてさまざまな人の手にわたり、そして15世紀末以降、印刷本という形で後世に継承されてきたと言えよう。
アピキウスの料理帖が最初に印刷されたのは1498年、ミラノにおいてである。慶應本はこの1498年の再版である。刊記に出版年が記されていないため正確な出版年は不詳であるが、ヴェネツィアから1500年前後に刊行されたと考えられている(BMC, V, 550)。所々に使われている木版による装飾頭文字が美しい。

【参考文献】
Apicius, Cookery and Dining in Imperial Rome: A Bibliography, Critical Review and Translation of the Ancient Book Known as ‘Apicius de re Coquinaria’, trans. into English and ed. by Joseph Dommers Vehling, with introd. by Frederick Starr (Chicago, IL: Walter M. Hill, 1936; repr. New York: Dover, 1977)
アピキウス『古代ローマの調理ノート』千石玲子 訳 (東京: 小学館, 1997)
上田和子『おいしい古代ローマ物語—アピキウスの料理帖』(東京: 原書房, 2001)

(ST)

詳細情報

Author
Apicius
Place of Publication
Venice
Printer
Bernardinus Venetus, de Vitalibus
Format

4º

Date of Publication
[1498-1500]; [after 1500]
Binding

Modern antique style brown morocco, blind tooled with two double thonged, raised bands.

Bibliographical Notes

40 leaves.

ISTC
ia00922000
Reference: 
Goff A922, H 1281*, C 5671, BMC V 550 (Apicius only), GW 2268, IJL 021, IJL2 027
Shelfmark
120X@672@1
Acquisition Year
1986